台湾の斗六市は雲林縣の県庁所在地だが人口10万の地方都市だ。アジアウィンターリーグがよく行われるので、コロナ前は毎年のように斗六の球場に来ていた。
なーんにもない町と言う印象で、球場も1.5万人収容だが至って愛想がない。

座席には砂埃が溜まっているし、売店も何もない。アジアウィンターリーグは無料だが、それでもお客は100人くらいか。

平日の昼間にこんなところで野球を観るのは暇人しかいない。ぼんやりと野球を眺めながらおしゃべりをする人々を眺めていたのだが、そこに、スラッと背が高くて黒い服に身を包んだ髪の毛の長い女性が現れた。「掃き溜めに鶴」とはまさにこのことだ。人がぽつぽつと座る客席に腰を下ろしたのだが。
彼女の服は、上半身とスカートの間に、何も着ていない部分があって、これって今でも「へそ出し」というのだそうだが、要するにそれだった。洋服代金をケチってこんなになったのではなく、恐らくそういうファッションだろう。

台湾は今でも日中は25度以上あるから気候的には問題がないが、暇人の吹き溜まりのような平日の休日には極めて異彩を放っていた。
この日の試合は台湾のプロ選手が出場している。誰かの彼女だとは思うが、たまたま近くに座っていた私にはかなりの衝撃だった。

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少し前にも「ローライズ」といって、お尻の割れはじめくらいまでパンツをずらして履いてへそを出すのが流行ったが、あの時は、男も女も、スタイルのいい人も、そうでない人もやっていた。中には昔の漫画で「もうお腹いっぱいで何にもはいんないや」みたいになっている人もいたが、いまどきの「へそだしコーデ」は、厳しく人をえらぶ。



胸囲よりも腹囲の方が大きいような人、手足が短い人、小柄な人は、あまりやらない。8頭身とかそれ以上のスタイルのいい女性が、これ見よがしに「お腹の部分」を見せる。見せるべき「腹部」がある人とでも言おうか。
またそのお腹は、カブトガニを裏返したときみたいに筋肉が割れているのもよくないようで、チューブから今ひねりだしたように凹凸がなくて、表裏の区別は「へそがあるかないか」みたいなのがいいようだ。私などは目のやり場に困るが、それが格好いいという人がいるのだろう。

韓国で流行っているファッションのようで、露出した腹部をくねらせて踊るのが格好いいのだそうな。

「へそ出しコーデ」は、何を見せつけているのか?おそらくは「私は胃腸が丈夫です。冷やしたって平気です」と自慢しているのではないだろう。「このまま南極越冬隊にだってなれます!」ではないと思う。
「私は『へそ出し』ができるほどスタイルが良くて、肌がきれいなのよ」ということではないか。申し訳ないが、私にはあまり賢そうに見えないのだが、ま、私などは彼女たちに言わせれば「世間の目」の内には入っていないだろう。

子どもの頃、祖母は風呂上がりの子どもをバスタオルでくるむように拭き、パンツやパジャマを着せると、その上から「腹巻」をさせたものだ。「お腹が冷えるで」といって。
それ以来、腹部は外気から守るべきもの、温めるべきものと思っていた。国の法律が変わって「男女とも公式の場に出るときは、30㎝以上腹部を露出すること」みたいになったら、私はたちまち下痢をするだろう。

腹部を外気から守るものを「腹巻」ということからして、腹部をわざと露出させる「へそだしコーデ」は、「腹巻かず」と言うべきではないかと思う。
「腹巻かず」を自慢げにひけらかしていると知ったら、その女性の祖母は「腹巻」をもって追いかけてくるのではないか。

「腹巻かず」を長く続けていると、胃腸は丈夫になるかもしれないが、それにしてもけったいなものが流行るものだと思う。

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