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食習慣において、関西人がそれ以外の地域の人と大きく違う点に「麺類、粉もんをおかずにご飯を食べる」があると思う。
関東の人はそば好きだが、そばをオカズにご飯を食べたりしない。もんじゃ焼きが好きだが、もんじゃ焼きをオカズにご飯を食べることもない。
しかし関西人はうどんをオカズにご飯を食べるし、お好み焼きとご飯の「お好み焼き定食」というものもある。味噌汁がついていたりする。
どうやらこれは「濃い味の食べ物を食べると、ご飯が欲しくなる」という関西人の食の傾向に起因しているようで、私は直接は知らないが、今年91歳になる母の母方の祖母で、箕面の旅館の女主人だった人は「かやくご飯をオカズにご飯を食べていた」という。

うどんや粉もんも炭水化物、ご飯も炭水化物。炭水化物をオカズに炭水化物を食べてもいいのか、と思うかもしれないが、関西では「それもあり」なのだ。
大阪、船場の商人の間では、昼食の定番メニューに「うどんとシマ」というのがあった。うどんはうどんである。シマとは堂島、つまり米市場のたった場所で、すなわち白ご飯のこと。「うどんとシマ」とは「うどん定食」のことだったのだ。うどんの汁をちょっとすすってはご飯を掻き込む。手早く済むし、安くて満腹感もある。

ただ、関西人はだからといってうどんの中にご飯をぶっこんだり、ご飯の上にお好み焼きを乗っけたりはしなかった。それはざんない(見るに忍びない)。あくまで他のオカズ、魚の煮つけとか野菜の炊き合わせなどと同様、うどんやお好み焼き、場合によってはかやくごはんも、「おかず」として箸で口に運んで、その後味が残るうちにご飯をかきこんでいたのだ。

それが基本。うどんや粉もんも、ご飯のおかずとして「別個」に食べるのが「好ましい」姿勢だったのだ。それが関西の食文化だった。だから、最近はやりのラーメンの残り汁にご飯をぶっこむ「追い飯」は、似て非なるものと言えよう。別にそれも嫌いではないが。

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しかし、昨今はけしからん人もいる。ある時若い人とうどん屋に行った。二人とも鍋焼きうどんとご飯を注文した。これは冬には特に好もしい。鍋焼きうどんはオカズになる具も多い。エビ天など入っていれば、特に「豪華」な気分になる。

鍋焼きうどんは時間がかかる。先に白飯が漬物と共に運ばれてきた。当然、このご飯は「鍋焼きうどん」とのコンビネーションで食べるべきものだ。白いつやつやしたご飯を見ながら、じっと待つのが当たり前だ。しかるに、私の連れの若い男は、ご飯が運ばれてくるや、茶碗を手に取って漬物と共に、あっという間に食べてしまった。

なんたること!私は心の中で海原雄山になって、ステッキでテーブルをぶっ叩きそうになった。この男は「うどんとシマ」の何たるかを知っていたのではない。ただ単に「鍋焼きうどんでは足りないから、白飯を頼んだ」に過ぎない。何たる物欲、何たる野蛮。読者各位はこの無法者について「佐藤輝明のような容貌」だと思っていただきたい。

鍋焼きうどんが来た。私は彼に教えるべく、うどんを食べてはご飯をちょっと食べて見せたが、かのサトテルはざばざば音を立てて鍋焼きうどんをあっという間に平らげた。

食欲の前に「関西の食文化」もへったくれもなかったわけで、かれに「うどんとシマ」を説明するのはあきらめた。食欲の躍動するのを盛るのも悪いものではなかったからだ。


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