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寿司ネタにもいろいろあるし、巻物にもいろいろあるが、私は中でも「伊達巻」に強い愛着がある。
寿司の「通」を気取るような人なら、巻物、しかも伊達巻って、と言われるかもしれない。
野暮かもしれないし、図体が大きいから「そんなの食べたらほかの寿司食べられないよ」と思われるかもしれない。

そもそも伊達巻とは、卵に魚のすり身を入れて甘辛く味付けして焼いた卵焼きのことだ。その芯に寿司飯、鯛田麩、海苔、シイタケ煮などをくるんで巻いたものも寿司屋では「伊達巻」「伊達巻寿司」という。

「伊達」とは「派手な」「デコラティブな」という意味だ。江戸時代後期に

わしが国さで見せたいものは むかし谷風、いま伊達模様

という俗謡が流行った。これは仙台藩の名物を謡ったもので、実質的な初代横綱とされ、雷電為右衛門の師匠格でもあった大力士、谷風梶之助と、伊達の殿様の派手な大名装束が「仙台藩の名物だ」ということだ。

「伊達もの」「伊達や酔狂」などともいう。「伊達巻」もそういう見た目の派手さからきているという。一説には伊達の殿様の好物だともいうが。

この寿司は、持ち帰り寿司専用みたいになっている。一度だけ、カウンターの寿司屋で注文したことがあるが、職人は、ちょっと嫌そうな顔をした。材料はあるのだが、一切れしか食べなくても、一本まるごと作らなくてはいけないからだ。作らせるのなら土産で持ち帰るべき寿司なのだろう。

さて、私は甘い田麩と甘いシイタケを、これまた甘い卵で巻いた伊達巻が大好きなのだ。食べると何か幸福になる気がする。
また、伊達巻に限って、東京で食べても、大阪でも、仙台でも、博多でも具材や味が、それほど変わらない。

「寿司といえばネタの鮮度とシャリと、握り具合じゃないか、その粋を味わうものだろうが。伊達巻だなんて、寿司のうちに入るかよ」という人もいるかもしれないが、そういう通な人はしっしっ、である。

子供のころ、商売をしていた祖母の家に行くと、昼は寿司桶に入った盛り合わせ寿司を取ってくれて、それが楽しみで仕方がなかったが、とりわけ「伊達巻」が楽しみだった。そのあたりが好きのはじまりだろう。
だいたい盛り合わせ寿司に一つ、タイヤを横倒しにしたみたいな感じで入っている。私は今でもこれが楽しみで仕方ない。

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本当のところを言えばランチなら、「伊達巻」だけで済ませたいくらいなのだが、ぶっとい伊達巻を嬉しそうに、いくつもほおばるおっさんというのは、不気味な印象を与えると思うので、一個で我慢している。

これまで「伊達巻」が好きだ、と声を大にして言う人に出会ったことがないが、好きで悪いか、なんか文句あるか、とひそかに思っている次第だ。


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