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トヨタイムズ
「イチローさん、次いつ出社しますか?」"世紀の偉業"へ豊田章男から"世紀の現物支給"?
なんとなく気持ち悪いと思った人が多かったのではないか?

トヨタグループは、2019年から「トヨタイムズ」というオウンドメディアを立ち上げている。いわば「企業広報メディア」であり、宣伝、チラシの類である。電通が提案したとも、豊田章男が「こういうのを作りたい」と言ったともいわれる。

企業のオウンドメディアはそれこそ星の数ほどあるが、トヨタイムズは圧倒的な資金力がある上に、日本のテレビ、新聞など主要メディアにとって最大級のクライアントだから、トヨタイムズのメッセージは、CM枠やテレビの広告枠でどんどん露出する。
あたかももう一つのメディアができたような錯覚さえ覚える。テレビ朝日アナウンサーの富川悠太が、トヨタイムズのキャスターになったから、余計にその印象は強い。

このメディアはトヨタグループのPRと言い丈、オーナーの豊田章男の「言いたいこと」「発信したいこと」を発信するメディアである。本来はトヨタグループの社員に言えばすむことを、日本国民全体に発信しているような錯覚さえ覚える。
「トヨタは日本一の企業で、トヨタが嫌いな日本人なんていないんだから、伝えて悪いことなど一つもない」とでも言いたげな感じだ。

しかしトヨタイムズがオウンドメディアである限りは、トヨタに不祥事が持ち上がったときに、トヨタイムズがいち早く伝えるようなことはない。
最近では、トヨタグループの各企業で「認証検査不正」が起こった。トヨタイムズは「認証問題・適正取引 、業界全体で取り組み強化」という記事を出した。オウンドメディアにしては異例ではあるが、豊田会長の責任には一切言及せずに「自工会会見」という一般論に終始した。
トヨタグループの不祥事、とりわけ経営陣の不祥事が発覚したとしても、トヨタイムズはそれを真正面からは伝えないだろうし、日本一のクライアントだから、テレビや新聞などのメディアも、及び腰で伝えるはずだ。

要するにトヨタイムズは、日本の中にできつつある「トヨタ王国」という別の国家のメディアなのだ。この国は表立っては自由主義の様だが、少なくともトヨタ、豊田家に弓を引くことは許されないはずだ。

そういう背景のあるトヨタイムズは、昨年、イチローを「会長付特別補佐」にしたそうだ。単なるスポンサードではなくイチローを「社員にしてやった」。しかも、恐れ多くも豊田会長の「特別補佐」にしたわけだ。
そしてこの度、野球殿堂入りしたイチローに、豊田章男は、トヨタの社内規定通り、
「業務内外を問わず全国規模の受賞の場合、所属の本部長より表彰、労いとして表彰状と商品券3万円分を渡す」
ことにしたと言うのだ。
普通に考えれば、殿堂入りした大スターに「3万円の商品券」を渡すことなど、考えられない。失礼極まりないが、そんじょそこらの会社ではなく「日本一のトヨタ」が「ほめてつかわす」のだから「ありがたく受け取れ」という感じか?

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何とも言えない「嫌な感じ」がするのは、私だけではないと思うが。
ものすごい大企業かもしれないが、たかが株式会社の分際で、野球に歴史に残るレジェンドアスリートを「一社員」扱いしているわけだ。そして、親の跡を継いだだけのぼんぼん経営者が、才能と努力の究極の結晶たるイチローに、はした金を渡して、お礼を言わそうとしているのだ。

昔、近鉄グループが「文化勲章三代」の上村松園、松篁、淳之の作品を集めた美術館をつくるときに、近鉄会長の佐伯勇の奈良の屋敷跡に作ったから、松園、松篁の「松」と、佐伯の「伯」をとって「松伯美術館」にした。
数年前に、この間亡くなった上村淳之にインタビューをしたが、彼はいきなり「あの美術館、一枚も絵を描かへん佐伯さんの名前いれてんねんで、おかしいと思わへんか」と言った。そして「どうせ、わしが死んだらわしや先祖の作品もみんな近鉄のものになるんや」と無念そうにつぶやいた。

多くの企業人は、企業のトップまでのぼったら、不世出の芸術家やアスリートと互角になる。あるいは、そういう人間も目下のように扱える、と錯覚している。

しかし、企業のトップなど、死のうと、病気になろうと、社員以外の人間は困らない。世間はなんとも思わない。しかしすごい芸術家やアスリートを失えば、人々は悲嘆にくれる。その違いを思い知るべきである。

トヨタイムズは「何様度」が最高潮に達した、不気味メディアになりつつある。




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