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大谷翔平を見たい、という一心で空港に人が詰めかけ、練習があるというだけで東京ドームにも人が押し掛ける。
明日の東京ドームはすさまじいことになるのだろうが、この異様なブームは、野球ブームなのだろうか?

シーズンインまで半月を切って、今、日本中で、アメリカ中で、プロ野球選手たちは試合をしている。みんな、助走から全力疾走になって、スタートダッシュをかけようとしている。

私はオープン戦を毎日のように観ているが。今が、実は一番いい時だと思う。「ワクワク感」もあるし、初めて野球を観た時のような新鮮な感覚もある。野球好きにとって、今は一番いい時なのだ。

しかし今年は、そうしたワクワクをそよ風だと思わせるくらいに、すさまじいサイズのハリケーンが、アメリカから上陸した。言わずと知れた大谷翔平だ。

私だって、大谷翔平はワクワクするし、見たいと思うけど、彼だけを見たいわけではない。彼は野球選手で、チームメイトとともに野球をするために日本に来ている。対戦相手も来ている。ファンは、大谷も含めたMLB、野球を観に来ているのだ、ということを忘れてはいけないだろう。

今の大谷のすさまじいブームは、35年前の「F1ブーム」を思い出させる。このとき大谷翔平に当たるアイドルは、アイルトン・セナだった。ロータス・ホンダからマクラーレン・ホンダに乗り換えて、あっという間に最強パイロットになるとともに、日本中は沸きに沸き、鈴鹿サーキットのチケットは「プラチナ」になった。私はこの時期、毎年F1日本グランプリを現地で見ていた。仕事もちょっとしたが、このころのF1観戦ガイドブックには「セナのスタートシーンを観たら、帰り道が込まないうちに、レース途中で帰るのがスマートでおしゃれ」みたいなことを書いたものもあった。
当時はバブルの真っ最中であり、着飾って鈴鹿サーキットに来た紳士淑女は、パドックでシェフの食事を食べて、レースが始まると、早々に帰っていった。サーキットの近くのヘリポートには、自家用ヘリが止まっていたりした。フットワークの社長が、お客をアテンドしたりしていた。
つまり彼らが好きだったのは「セナを近くで見ることができる格好いい私」だったのだ。

もともと今のプロ野球は、しっかり試合を見る人があまりいない。応援したり、タバコに行ったり、何か買ったり、スマホを観たりする合間に、ちょろっと試合を見るだけである。
大谷翔平の試合では、大谷以外には、関心を示さない人も多いのだろう。

同じ時間を過ごすのなら野球を「ちゃんと観て」ほしい。ちゃんと観れば、野球は本当に面白いのだから。

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