「やくざの子供」 : 野球の記録で話したい

子供のトラブルを解決するために、母親が学校に乗り込んできて押し問答をして、埒が開かないと見るや電話をして、20代と40代の男を呼んだ。焼酎の瓶を持った男たちは、教師を殴ったり、窓ガラスを割るなど暴れて警察に逮捕されたという。

いずれ詳細が明らかになるだろうが、これ、親がモンペの凄いのだった可能性もあるが、日本人でない可能性もあるだろう。いまどき、やくざや反社であっても、日本人なら学校内で暴力をふるうことが、世間からどんな非難を浴びるかを知っている。「子供の喧嘩に親が出る」という言葉も日本ではよく知られている。
警察権力が弱く、社会の治安が不安定な国では、こうした示威行為が有効な場合もあるだろう。

私はいくつかの高校の学校案内を20年以上作ってきたが、ある学校の終業式の日に取材に行って、校長室で話を聞いていると、校庭を子供と母親が横切っているのが見えた。少し離れて若い男性が二人子供の荷物を持ってついていく。
「あれ、暴力団の組長の息子なんです。本人はおとなしいんですが、子供に手を出さないようにさせるために、ああしてひけらかしているんです」
と言った。そして
「今は逆に、暴力団の子供がいじめられたりするんでね」
とも言った。

日本のプロ野球は「暴力団、反社会勢力との接触を厳禁」している。1970年前後の「黒い霧事件」では、暴力団とつるんで八百長試合を行った選手が永久追放になったが、それ以来「暴力団」「反社」との交際は、明らかになれば「一発アウト」になる可能性もある。

しかし「親がやくざ」の家の子はどうなるのか？家に帰れば、やくざの父親がいて、話をせざるを得ない家の子は、野球選手になれないのか？

噂レベルでは「親がやくざ」と言われる選手は何人かいる。中田翔など「広島のやくざの子」と言われた。私は中田翔の祖父を取材したことがあるが、それは虚偽だった。中田翔の祖父は鶴岡一人とも面識がある街の名士だった。

しかし中には「ほんもの」もいる。巨人、原辰徳を恐喝した暴力団の息子がプロ野球選手だったのは間違いないようだ。
その息子は今、野球指導者になっていて極めて真っ当ではあるが、この問題、「忠ならんと欲すれば孝ならず」で、本人が板挟みになるし、白黒つけるのは難しいだろう。

我々が心すべきは、どんな人物でもその出自や背景以前に「その人」をしっかり見つめることなのだろう。