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鶴岡一人は、法政大学を卒業して1939年に南海に入団したが、法政大学は「大学卒業者が『河原乞食』の職業野球に身を落とすとはなにごとか!」と激怒してOB会を破門になったと言う。
当時も大学から職業野球に転じる人はたくさんいたが、多くは中退で卒業者は少なかったのだ。
鶴岡は1年目に本塁打王をとる活躍だったが、オフに応召し戦後まで帰ってこなかった。日本が戦争に負けてからは職業野球を「河原乞食」と蔑む風潮はなくなったとは思う。

しかし、今は別種の「偏見」が残っている。
「プロ野球に行くのは、名門高校でプレーして、甲子園に出場た選手か、大学で活躍して、ドラフト上位で指名された選手、独立リーグ上がりとか、育成とかは、どうせ昇格できないんだから行かない方がいい」

これも日本人の「エリートを有難がる」志向が背景に潜んでいる。小さいころから才能を認められ、そこからエリート街道を歩んだ人だけが、プロ野球選手になることを「許される」という感じだ。

高校で怪我をしたり、指導者と喧嘩をしてドロップアウトしたりした選手は「運がなかった」「もともと資質がなかった」と見なされる。
周囲はそういう選手に「夢ばかり追いかけるなよ、お前いくつになるんだよ」という。

しかしそんな選手の中から、プロで活躍するような選手が出るのが今の世の中だ。

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昔は「名門高校」「名門大学」「有名社会人チーム」出身の選手でなければ「スター選手になれない」と信じられていた。実際はそうではない選手もいたのだが。

しかし今はオルタナティブなルートが存在する。一つは「独立リーグ」だ。2005年に四国アイランドリーグができてから今年で20周年、今や6リーグ27球団がリーグ戦を戦っているが、ここでプレーする選手の多くは「ドロップアウター」だ。強豪校から怪我や指導者との反目などでドロップアウトした選手がたくさん入団している。さらに、高校まで「問題外」と思われた平凡な選手で「プロ入りをあきらめきれない」選手もいる。
これらの選手が、これまで経験してこなかった試合数を消化する中でポテンシャルを向上させ、NPB入りを果たしているのだ。

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また社会人の「クラブチーム」もオルタナティブなルートだと言える。「企業チーム」とは異なり、クラブチームの選手は他の仕事で収入を得て、社会人野球の大会に出場している。実質的に独立リーグと変わらない環境から「プロ」を目指しているのだ。

この手の選手に対しては「いつまで遊んでいるんだ、いい加減に親を安心させろよ」みたいに言う人がたくさんいるのだ。鶴岡の職業野球入りのときに周囲が見せたような「冷ややかな視線」がいまだに存在している。

日本人は「プロ野球は一部の天才みたいな選手だけが入るもの」という認識がある。それ以外の人間は「遊んでなくて、自分たちと同じように働けよ」という同調圧力をかけるのだ。

そういう意味では「職業野球への偏見」は残っていると言えるのではないか?




Note


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