3試合とも僅差の勝負。じりじりするような投手戦が続いた。殊勝なことに民放地上波が最後まで放送しているので、リアルに試合を追いかけた人は多いはずだ。このシリーズを、おそらくは座り心地の悪い椅子に座るような思いで見ている関係者がいる。
中日の坂井克彦球団社長をはじめとする経営陣だ。「殿堂入りされたし」とよくわからない理由で落合監督との契約延長をせずに、引導を渡した面々だ。「クビ」を宣したとたんに、落合中日は覚醒したようにペナントレースを制して、クライマックスシリーズも勝って、堂々の日本シリーズ進出。しかも、戦前の予想を覆して、2連勝(昨日は負けたが)。
すでに坂井社長は、リーグ優勝祝勝会であからさまなバッシングにあったようだが、落合中日が、優勝に近づけば近づくほど、居心地は悪くなっているに違いない。
もし日本シリーズに優勝して退任したとすると、落合監督は同じ中日の天知俊一監督に続いて二人目だそうである。天知監督の時はなぜ退任したのか、よくわからないのだが、のちに中日フロントに入っているところを見ると、解任ではなかったのではないか。落合監督のようなケースは、初めてではないかと思う。
落合政権が長期化するとともに、観客動員数が伸び悩むようになった。その一因として、落合の「面白くない采配」があるといわれた。しかし、それは無茶な話だ。ペナントレースを勝ち抜くだけでも至難の業なのに、“集客”“人気”ノルマまで負わせるのは酷すぎる。
観客動員の不振は、一にかかってフロント、営業陣の責任だ。自らの無能の責任を現場におっかぶせたといわれても仕方がないだろう。「人心一新」を図りたいという経営陣の考えは理解できなくもないが、あまりにも拙かったというべきだ。
今年の落合中日は、日本シリーズに出た時点で、すでに十二分に責任を果たしている。彼を解任する理由は見当たらない。日本一になれば、首を切った経営陣への風当たりはいっそう強くなるだろう。
さらに来年、落合監督が退任後、他球団の監督に就任して中日の連覇を阻むようなことがあれば、経営陣は愚かな人事を行っただけでなく、自社のリソースをむざむざライバル企業に流出させたという点で、さらに責任を問われるだろう。一般企業なら株主代表訴訟が行われても不思議ではない。ましてや落合監督の後任は、来年71歳、監督としての手腕も劣るとされる高木守道なのだ。来季の失敗は、すでに半ば約束されているといってもよい。





今年のNPBは、フロントの資質が問われるような事件が頻出した。NPBでプレーする選手は、激しい競争を勝ち抜いてきた一流の人たちである。また監督も毎年厳しいペナントレースを戦って淘汰されている。いわば、現場はこの世界では「一流」の人たちだ。しかし、そんな現場を統括する経営陣は、はたして「一流」なのだろうか。選手や監督たちのように、淘汰された人々なのだろうか。親会社からの出向であれ、サラリーマンであれ、経歴は問わないが、選手たちに拮抗しうるような人材が、会社を経営しているのだろうか。多くのファンはそんな疑問を抱いているに違いない。
そういう不信感を身をもって感じるためにも、中日ドラゴンズの経営陣は、もう少し針のむしろに座ってほしい。そしえ、むざむざと首を切られる人々の無念さに忖度してほしいと思う。


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