久々に「清武の乱」が大きな話題となった。産経新聞より

プロ野球巨人が一部選手と契約金の最高標準額を超える契約を結んでいた問題で巨人は26日、会見を開き、契約に関する内部資料を流出させたのはコーチ人事をめぐり、球団会長で読売新聞グループ本社会長兼主筆の渡辺恒雄氏(85)の介入を批判、昨年11月に解任された元球団代表兼GMの清武英利氏(61)である可能性が最も高い-と発表した。


清武氏は近著「巨魁」で、清武氏がGMに就任した直後に、それまでの新人選手契約にかかわる書類を保管した金庫がどこかに持ち去られたと書いた。 ⇒ http://baseballstats2011.jp/archives/4483009.html

「巨魁」刊行直前に朝日新聞が巨人の新人選手裏契約問題をスクープしたが、読売側の情報を朝日にリークしたのは清武氏ではないと見せかけたいがために、自著にアリバイ工作めいた不自然な一節を埋め込んだのだ。

昨年11月、清武氏が突如記者会見をしたときに、マスコミ、世間があれほど驚いたのは、讀賣、巨人側の秘密の核心を知りうる人物が、会社を批判したからだ。我々のような部外者が同様の発言をしても、誰も注目などしない。内部告発であればこそ、インパクトがあったのだ。

朝日新聞による巨人新人選手裏契約問題キャンペーンも、しかるべき立場の人間による、内部情報に基づくものでなければ、誰も信用しなかった。
タイミングから見ても、情報を漏らしたのは清武氏しかいなかったのだ。

讀賣、巨人側は、清武氏が会社の機密に属する資料を持ち出し、他社にリークしたのなら、「窃盗罪」にあたるとしている。

清武氏はそうした罪に問われることを避けるために、資料持ち出し、リークを否定したのかもしれないが、下手な嘘は沈黙よりもはるかにたちが悪い。

イギリスでは昨年から「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」などのタブロイド紙が有名人、権力者の盗聴を行っていたことが大スキャンダルになった。盗聴や内部資料の持ち出しなどは、犯罪行為であり、刑事罰を受ける。

しかしながら、不正に得た情報であっても、それを公表することが、社会全体の利益に資するものであれば、それは容認される場合がある。

「ウォーターゲート事件」では「ワシントンポスト」のウッドワードとバーンスタインという二人の記者が、違法性のある調査も含め、強引な取材によって、ニクソン大統領の犯罪を暴露し、政権を退陣に追いやった。
後に「ウッドスタイン」と呼ばれるようになる二人の記者は、取材の過程で違法行為をしたかもしれないが、その違法性をはるかに上回る重大な「大統領の犯罪」を明るみに出したことで、違法行為は不問に付されたのだ。

ジャーナリズムの特殊さは、巨大な権力に立ち向かうときには、法を犯す覚悟も必要だということだ。ジャーナリストには、ふつうの「お仕事」を超越したより大きな使命感と勇気が求められている。また、それだからこそ「第四の権力」と呼ばれ、国家権力に対峙する力を与えられているのだ。

私は3月に「読売新聞、巨人は恥ずかしい抗議をするな!|野球報道」というブログを書いた。そこでは自社の情報を盗まれたからと言って、警察権力にいいつけるジャーナリズムがどこにあるのだ、と書いた。
⇒ http://baseballstats2011.jp/archives/4434621.html

ジャーナリズムは、ときには巨悪を暴くために、小悪(必要悪)に手を染める覚悟が必要だ。その意味では、清武氏が巨人の内部資料を盗み出した行為は、社会的に認められる可能性があった。

しかしながら、それは、愚直なまでの正義感に裏付けられていることが前提だ。取材源の秘匿をするのは許されるが、自らの行為を正当化するための工作を行ったり、虚言を吐いたりすることは認められないのだ。

要するに「巨悪の嘘」を暴く人間は、嘘をついてはいけないのだ。また自己保身に走ってもいけない。この部分で清武氏は大きな判断ミスをした。

清武氏はこういうべきだった。

「巨人軍、NPBの健全な発展を促すためには、巨人の不正を看過することはできなかった。だから、違法性を認識しつつ情報を持ち出し、最も効果的な方法で社会に公表した」と。

この一件で、「清武氏の情報漏えい」に関する問題が、ことの本質である「巨人の金権体質」よりも大きくクローズアップされてしまった。それこそ讀賣、巨人側の思うつぼである。軽薄なマスコミも、一斉に「清武の嘘」に関心を寄せることだろう。

「清武の乱」「朝日の乱」は、旧態依然としたNPB、そしてプロアマの癒着にメスを入れる好機だったが、これでかなり難しくなった。

清武氏は巨悪を指弾するには器が小さかったのかもしれない。
かくなる上は、清武氏の方から、巨人軍の金庫から情報を持ち出して他紙にリークしたことを正直打ち明け、謝罪をするべきだ。罪に服する覚悟で「正直清武」に戻るべきだ。

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